「読み聞かせ」と聞いて、どのような状況を思い描きますか?
多くの方が
「親が絵本を読み、隣で子供が静かに聞いている」
このような状況を考えたのではないでしょうか?
実は絵本の読み聞かせはこの良くある方法だけではありません。
いつもの読み聞かせ+αによって、語彙力や思考力・伝える力など生きていく上で必要不可欠な能力が飛躍的に伸びると聞いたら信じますか?
いつもの読み聞かせに追加するのは
「対話」
「静かに聞く」とは、かけ離れていますが、これこそが語彙力や思考力・伝える力を飛躍的に伸ばす方法です。
- ダイアロジックリーディングの方法やコツを把握できる
- ダイアロジックリーディングを4歳の長女に実践。その効果
- 今日からダイアロジックリーディングができるようになる
ダイアロジックリーディングとは
ダイアロジックリーディングとは、絵本を読みながら、子どもに質問を繰り返します。
そうすることで、思考を深めることができる、読み方です。
この方法は1970年代からアメリカで研究されてきました。
1990年代にアメリカの心理学者である、ニューヨーク州立大学のグローバー・ホワイトハースト博士らの研究チームが開発し、提唱しました。
その後、ハーバード大学をはじめ多くの大学で研究されました。
新しい読み聞かせの学習方法として、現在も注目されています。
従来の読み聞かせは
『大人が本を読み、子どもはそれを聞く』というものです。
途中で子どもが口をはさむと、「静かに聞いていてね」と注意をしたりします。
すなわち、読み手が主体です
一方ダイアロジックリーディングは、聞き手が主体です。
つまり子どもが主体になります。
読み聞かせ中は、子どもの言葉をどんどん促しながら、親子で会話をして読み進めます。
読みながら親が質問をすることで、子どもは、ただ聞いているよりも深くストーリーや背景などを考えます。
その過程で、自ら学ぶ姿勢、想像力、クリティカルシンキングなど生涯役立つスキルを身につけることができます。
また、自分の考えや意見を整理して発言をすることで、文章構成力やプレゼンテーションの練習にもなります。
読み聞かせの方法を少し変えるだけで、たくさんのメリットが得られます。
それでは、ダイアロジックリーディングの効果について確認していきましょう。
ダイアロジックリーディングの効果
ダイアロジックリーディングで主に伸ばすことが出来ると言われている子どもの能力は6つ。
- 読解力:理解力、インプット力
- 思考力:ロジカルシンキング、想像力、クリエイティビティ
- 知識・語彙力
- 聞く力:集中力、傾聴力、記憶力
- 見る力:観察力、注意力、感受性
- 伝える力:表現力、文章力、主張する力
子どもが持つ能力がこんなにも伸びる、方法をやコツを確認していきましょう。
ダイアロジックリーディングの4つのステップ
ホワイトハースト博士らは、初めて読む本はダイアロジックリーディングをしないで、2回目以降に毎ページ上記の4つのステップを試してみることを推奨しています。
【4つのステップ】
- 子供が発言するように背中を押す
- 子供の発言に共感・褒める
- 子供の発言に情報を加えて、質問を重ねて話題を広げる
- 語彙を繰り返す。要約をする
質問の具体的な方法
ホワイトハースト博士らは、最初のステップ『子供が発言するように背中を押す』時に使える5つの質問を提案しています。
- 誰、いつ、どこ、何を、なぜ、どのように
- オープンクエスチョン
- キーワードを答えさせる空欄を作って質問
- 本の内容を説明してもらう質問
- 本を実体験と結びつける質問
①②③は比較的小さな子供でも行えますが、④⑤は情報の整理など思考力が必要になるため、4歳・5歳くらいから実践してみると良いと思います。
ダイアロジックリーディングのやり方
ダイアロジックリーディングの4つのステップをまとめると次のようになります。
- レベル1:基本の質問をする
- レベル2:オープンクエスチョンをする
- レベル3:コンセプトに関する質問をする
①絵や文章から、簡単に回答が見つかる質問をします。
「誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように」を聞きます。
どのレベルでも共通していますが、子供が答えるまでゆっくりと待ちましょう。
子供が答えたら、それを繰り返した後、褒めましょう。
少し情報を追加すると、語彙力や思考の幅が広がります。
例:「はらぺこあおむし」
親:「はらぺこあおむしは何色かな?」
子供:「みどり!」
親:「そうだね!緑だね。」
「体が緑色だね」…体の部分がわかる
「よく見ると緑も違う色があるね」…色のグラデーションを知る
「顔は色が違うね」…違う色や顔と体の違い・名称などがわかる
※追加情報は基本1つ。なくてもOK。
子供が答える時に違うことを言う場合:受けとめましょう。無理に修正していく必要はありません。
親:「はらぺこあおむしは何色かな?」
子供:「くねくねしてるね」「かわいい」
親:「ホントだ!くねくねしていて、かわいいね」
子供が感じたこと、考えたことをしっかりと受け止めましょう。
この経験を繰り返すことで、話すことに対して自信を持ち、考えの幅や思考力などが広がっていきます。
②オープンクエスチョンに挑戦します
オープンクエスチョンとは、「はい、いいえ」で答えられない質問です。
回答の自由度が高い質問のことを言います。
例えば、「○○は好きですか?」はオープンクエスチョンではなく、「好きなものはなんですか?」がオープンクエスチョンになります。
そのため、自分で考えて、考えを整理して質問に答えることが必要になります。
オープンクエスチョンの質問をしていくことで、子供が自分の意見を相手に伝える練習になります。
例:「はらぺこあおむし」
親:「はらぺこあおむし」は何で、たくさん食べたんだろう?
子供:「りんごが好きだったんだよ」
親:「りんごは甘くて、シャリシャリして美味しいもんね」
やってみた感想としては、初めのうちは同じ回答や質問を考える時間が長い様子でした。
1か月程度他の本を読み、再び読むと新たな価値観などが増え、大人もビックリするような答えが返ってくることもあります。
③より高度な読解力が必要になる「コンセプト」に関する質問をしましょう。
物語の全体像を理解することを目標に質問をしていきます。
初めのうちは作品のキーワード(繰り返される言葉)を答えてもらうような質問をしてみましょう。
その後、メインキャラクター、物語の背景、ストーリーのゴールなどを質問して物語の全体操を把握できるようにしていきます。
さらに、子供の普段の生活を物語の内容などと関連させて、質問をしていくことで様々なことを結びつけていくことができます。
例:「はらぺこあおむし」
親:「はらぺこあおむしはたくさん食べて太っちょになったら、何かに成長したかな?」
子供:「きれいなちょうちょになった」
親:「ホントだね。綺麗なちょうちょになったね。○○ちゃんはあおむしみたことある?」
子供:「ほいくえんにいるよ~」
「ほいくえんにいるのも、ちょうちょになるかな?」
親: 「どうだろうね」
子供:「こんどみてみる」
普段の生活や体験を関連付けていくことで、興味の幅が広がります。
知らないことを知る機会に繋がり、興味を持っていくことが増えていきます。
ダイアロジックリーディングを実践して変化したこと
- 語彙や表現方法が増えた
- 考える習慣がついた
- 発言することに躊躇がなくなった
- 考えることや興味の幅が広がり・深くなった
ダイアロジックリーディングを始めたきっかけ
長女に実践したのはこの方法を知った時なので、4歳2ヶ月の頃でした。
この頃はちょうど、読み聞かせを習慣化しようとしている最中でした。
その時実践した習慣化の方法はこちらの記事で紹介しています。
読み聞かせをしていると、なかなかじっとしないことや途中で遮られることも多く、読み聞かせがストレスになっていました。
『読み聞かせをして子どもの成長をさせたい』だけど『読み聞かせをするとストレスになる』そんな葛藤に悩まされました。
自問自答を繰り返しているとあることに気がつきました。
それは『読み聞かせのことをよく知らない』ということ。
ただ、読めばいいと思っていましたが、もっと別の方法があるかもしれない!
読み聞かせについてもっとしっかり学ぼう!
その時にたくさん調べた結果、読み聞かせでじっとしないことにも様々な理由がありました。
それをまとめたのがこちらの記事です。
実は固定観念が原因でストレスを感じていたことがわかったのは大きな発見でした。
読み聞かせをするストレスも解決され、さらに調べを進めていると、出会ったのがダイアロジックリーディングです。
ダイアロジックリーディングの効果を見て興味を持ち、詳しく紹介されレビュー評価が高い本を読み込んで実践しました。
この時読んだ本は最後に紹介しています。
ダイアロジックリーディング1ヶ月目 表現力や注意力がUP
はじめの頃は質問が難しく感じました。
何をどのようにするのが正解なのかハッキリしないことが不安でした。
上でも紹介した「はらぺこあおむし」であれば、
「何からあおむしは産まれたかな」
「あおむしは最初に何を食べたかな」
「あおむしは何でたくさん食べ物を食べたんだろう」
などなど。
ダイアロジックリーディングの効果は、ハッキリとわかりませんでしたが、今までよりも楽しそうな姿だったので、継続しました。
この頃注意したことは、とにかく「受け止めること」です。
正解、不正解は問わず受け止めました。
はじめて1ヶ月が経つころ変化が出てきたことに気がつきました。
語彙力や表現力が増加。
今までは全て「かわいい」だったのが、「カラフルな色でかわいい」や「楽しそう」だったのが「パタパタ飛んで気持ち良さそうだから楽しそう」など。
感想に至る理由や形容詞などがついて、具体的な表現や語彙が増えてきました。
また、注意力が上がりました。
絵本のストーリーとは関係のないページの端に描かれたものを指差し、色々な気付きを教えくれるようになりました。
「はらぺこあおむしが進む地面ってデコボコだね」や「食べる場所は真ん中じゃないのは何でだろう?」など。
気付きや新たな疑問を感じながら楽しんでいました。
その疑問をさらに聞いてみることで、また考える。
日常的に考える機会を設けようと、質問したりもしましたが、「わかんない」となりあまり上手くいきませんでした。
絵本だからこそ、物語を見て考えてみようとする姿があり、考えるきっかけ作りとして読み聞かせは子どもに適していると感じました。
ダイアロジックリーディング3ヶ月目 発言力がUP
3か月間全てダイアロジックリーディングだったわけではありません。
読み聞かせの一つの手段として、普通の読み聞かせとダイアロジックリーディングを行っていました。
3か月も経過すると、発言することに躊躇はなくなり、次々と色々な意見が出てくるようになりました。
1つの絵本だと同じような回答になってきてしまうので、色々な種類の絵本を読んでいました。
考える機会は日常生活場面でもみられ、「これは何でだろう?」と疑問を持ち、考えてる姿がありました。
まだ4歳だったので、知っていることに限界があってもその中で、時には親に質問をしながら考える姿がとても大きな成長のように感じました。
ダイアロジックリーディング 1年半経過 別人のような成長
ダイアロジックリーディングを始めて1年半経ちました。
冒頭でダイアロジックリーディングの効果について話したように
- 読解力:理解力、インプット力
- 思考力:ロジカルシンキング、想像力、クリエイティビティ
- 知識・語彙力
- 聞く力:集中力、傾聴力、記憶力
- 見る力:観察力、注意力、感受性
- 伝える力:表現力、文章力、主張する力
これらの力が成長した実感があります。
驚いたのが、親同士の会話のみならず、保育園や習い事でも積極的に発言する姿を見た時です。
体が小さいこともあり、それまでは後ろで小さくなって、聞かれてもモジモジして答えられない性格でした。
それが参観日などで長女の様子を見ていると、自ら率先して大きな声で答える姿がありました。
成長した力は娘の自信となり、性格が変化したように感じています。
ダイアロジックリーディングを実践して感じるのは、とにかく対話の機会を設けやすく、自然に色々な興味を引き出しやすいということです。
対話の中で、子供の考える発想は大人の凝り固まった思考を実感させるほどのパワーがあります。
ぜひ今日からやってみて下さい。
今日からダイアロジックリーディングをやってみよう
ここまで読んだらさっそく、今日からダイアロジックリーディングをやってみましょう。
始めから完璧にできる必要はありません。
絵本の読み聞かせの1つの方法として、子供と楽しくトライしてみて下さい。
実践する上で私も躓いた部分を質問形式でまとめるので、参考にしながら実践して下さい。
どんな絵本で、ダイアロジックリーディングをすればいい?
特に決まった絵本はありません。
始めは内容が簡単で短い物語をおススメします。
理由としては、物語が単純なので質問を作りやすい・答えやすいことです。
また、対話になるためどうしても読み聞かせ時間が通常よりも長くなります。
そのため物語が長いと途中でお互いに疲れてしまうという失敗経験があるので、まずは短い物語から始めましょう。
さらに1度読んでいる絵本が良いです。
初めて読む物語は内容がわからないため、質問を作りにくいということがあります。
ダイアロジックリーディングで一番大切なことは何ですか?
子供の発言に共感・褒めることです。
共感(言ったことを繰り返すでもOK)することにより、しっかり聞いているというサインになり、回答をする子ども達は安心感を得られます。
大人でも質問されて回答したのに無反応であったり、否定されると発言をすること事態が不安になりますね。
そのためまずは、しっかり受け止めることが大切です。
そのうえで、子供が考えた行動に対して褒めていきましょう。
「褒める」場合のワンポイントです。
心理学などの要素を考えると、「結果」に対して褒めるのではなく、「行動」に対して褒める方が、その行動を伸ばしやすいです。
そのため「考える」という行動を褒めていくことで、考えることが好きになっていきます。
具体例としては
「○○だね。正解」や「○○って考えられるのはスゴイ」ではなく、
「たくさん○○について考えていたね。じっくり考えられてスゴイ」や「○○を考える時に△△のことと一緒に考えられたね。その考え方とってもイイネ」
褒めるのは時々でOK。
その方が特別感があり、効果が大きくなります。
基本は受け止めるで問題ありません。
質問を上手く考えられません。どうすればいいですか?
質問は難しく考えなくて大丈夫です。
私も質問をするならできるだけ考えられるように、しっかり作らないといけないと思う時期がありました。
しかし、完璧にする必要はなく、単純な質問でも十分たくさん考えることができます。
むしろ単純な質問の方が、子供は理解しやすいため考えることに集中できます。
親の質問スキルは必要ありません。
難しく考えず、気楽に質問をしてみてください。
ダイアロジックリーディングをもっと知りたいです。どうすればいいですか?
私がダイアロジックリーディングを知るきっかけになった書籍を紹介します。
こちらの本ではダイアロジックリーディングをさらに詳しく、わかりやすくまとまっています。
著者は加藤映子さん。
ボストン大学を経て、ハーバード大学教育大学院に入学し、ダイアロジックリーディングの研究を重ねました。
日本におけるダイアロジックリーディングの第一人者として普及活動に尽力している方です。
この記事でさらにダイアロジックリーディングについて知りたくなった、実践してみた結果もっと詳しくなりたいと感じた方にオススメの1冊です。